ゴールデンウィーク中に読んだ本です。
太平洋戦争後にソ連に抑留され、最後まであきらめずに帰国を夢見、仲間達を励まし続けた山本播男という人の遺書を、仲間達が決死の思いで厳しいソ連の監視や密告をかいくぐって遺族の下へ届けられた話です。
今の世の中では考えられない、不条理な運命によって、何度も帰国できそうな状況から、最悪の状況に戻され、誰もが心がすさんでゆく中、俳句会を作って少しでも人間的な生活をしようとしていた(もちろんソ連側がそれを認めるわけはなく、地面に書いて、会が終われば消していた)山本播男という人は、とてつもなく人間味があり、前向きで、人望があったのだと思います。
今の世の中ならともかく、劣悪な環境で抑留され過酷な強制労働(矯正労働)を強いられているなかでの、山本の言葉がとても印象に残っています。
「ぼくはね、自殺なんて考えたことありませんよ。こんな楽しい世の中なのに何で自分から死ななきゃならんのですか。生きておれば、かならず楽しいことがたくさんあるよ」
今の私の日常(生活)であれば、同じセリフを言うのは難しいことではありません。でも、シベリアでのいつ終わるかも分からない厳しい抑留生活の中であれば、私にはこんなセリフを言える自信はありません。
結局、誰よりも帰国の希望を強く持ち続けた山本は帰国をすることができなかったのですが、山本に励まされ人間性を持ち続けることができた人たちは、帰国することができました。その人達が、自分の身に危険が及ぶリスクを冒してでも、命がけで山本の残した遺書や俳句や文章を、分担して日本に持ち帰えったのは、山本という人の人望や人徳を表しているのだと思います。
今の世の中がどんなに恵まれているのかを強く認識し、頑張って生きなければ、苦労をした先達に恥ずかしいと思った本でした。
ほんと、頑張って生きましょう。
収容所(ラーゲリ)から来た遺書 文春文庫 | |
辺見 じゅん
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