1950年に起きた、金閣寺放火事件を元に書かれた小説で、三島由紀夫なりの解釈をして小説化したものです。
犯人(主人公)が、子供の頃から事件までどのような境遇で成長し人格を形成し、そして、犯行に至ったのかが描かれています。
『声に出して読みたい日本語』などの著者である齋藤孝さんも絶賛する表現は、さすがです。・・・と言いたいところですが、正直ちょっと難しかったです。普段、小説、新聞、雑誌などいろいろ本を読んでいる方だと思いますが、単語の意味が分からなくて辞書を引くことは(日本語の本では)滅多にありません。しかし、この金閣寺を読む間には何度も言葉の意味を調べました。また、文章もさらっと読み流しただけでは理解できない表現も多く、行ったり来たりしながら読みました。
自分の語彙や日本語力の少なさを実感でき「もっと勉強せねば」と思えたのは、この本を読んでよかった理由です。
内容については、軽々に語ることはできないと思いますが、自分の理解(イメージ)の中で、生きている主人公は、三島由紀夫本人と重なる部分も多いのだと思います。そのイメージと現実とのギャップが、最終的に主人公は金閣寺を燃やすことにつながり、それはまた、三島由紀夫の最期にもつながっている気がします。
私などはそこまで純粋ではないし、妥協もするし、あきらめもするので、今の世の中で幸せを感じて生きてゆくことができるのでしょう。
普通に生きる為に最も重要なのはバランス感覚ですが、逆に芸術や文学などの世界では、尖りきったものがないといけなく、それが突き詰められると、精神破綻や命にも関わるところまで行ってしまうこともあるのだと思います。
金閣寺 (新潮文庫) | |
三島 由紀夫
新潮社 1960-09 おすすめ平均 |