どこまでコストや時間をかけるべきか

5月12日に三菱東京UFJ銀行のシステム統合が開始され、その日にATMが使えない等のトラブルがあったことが、大々的に報道されました。

 私自身、そのシステムの統合について現場を見ているわけではないのですが、どれほど膨大で難しい作業が行われたのかは想像できます。15年以上前ですが、私も大手システム開発会社で銀行のシステム開発に携わっておりました。そのときの念には念を入れ、2重3重4重のテストをする開発スタイルに最初はもの凄く戸惑いました。そこまでするか?というような準備、慎重な開発、テストを繰り返して、銀行のシステムは作られているのです。

 

そんな中で、今回発生した問題というのは、非常に軽微なものだと思いました。マスコミ各社は、システム部門(会社)のミスで、甚大な被害が出たように報道していましたが、その内容に違和感を感じていました。

そんな中、日経ビジネスオンラインに掲載された記事(「トレードオフの概念は日本に無いのか」
三菱東京UFJ銀のシステム一本化報道に思う)
を読んで、自分の考えに自信を持ちました。

 

記事内にも書かれているのですが、今回トラブルが起きたのは、その日の三菱東京UFJ銀行の全取引の0.02%でしかなく、その後トラブルを解決して10日稼働しているのだから、10日間の取引量の0.002%にトラブルが起きただけとも言えます。

 

もちろん、お金がおろせなかったりした人にとっては、問題ですが、99.98%動いているものを、99.999%動くようにするのには、莫大なコストがかかります。

それだけのコストをかけてでも、止まらないようにすべきなのか、それとも、そのコストと時間を節約して、別のサービスに振り分けるべきかを考えるべきだと思います。

 

システムのテストを行う場合、できるだけ本当の環境と同じ状態を作って、同じようにテストをするのがよいのですが、今回のような大規模なシステムだと、それをするには莫大な費用がかかります。例えば、テスト用ATMを何万台も用意して、アルバイトを何万人も雇って、同時にATMを操作してテストすることを想像してください。
私は、そのATMを、少しでも多くの場所に設置してもらった方が嬉しいです。たとえ、1日お金がおろせなかったとしても。

 

システム開発会社の人が、こういうことを言うと、言い訳や、自分の都合のよい考え方と思われるかもしれませんが、確率や費用対効果を考えるのは、誰にとっても非常に重要なことだと思います。

 

■関連リンク

NBonline 谷島宣之の「経営の情識」:「トレードオフの概念は日本に無いのか」三菱東京UFJ銀のシステム一本化報道に思う

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