日本のオリンピック代表選手らが、好記録を連発したことで、ますますSPEEDO社のレーザー・レーサーに注目が集まっています。
水泳選手の端くれとしては、きっかけはなんであれ、水泳に注目が集まることは大変喜ばしく思っています。
私のブログも、レーザーレーサーのことを何度か書いたおかげで、アクセス数が急増してます。ただ、これまでの記事はレーザー・レーサーのことを知りたい人にとってほとんど意味がない情報だったので、ここで、多少役立つ情報を書いておこうと思います。
■レーザー・レーサーとは
イギリスのSPEEDO社が開発した水着です。
新開発の素材を、無縫製でつなぎ合わせたもので、2008年2月に発表されました。ヨーロッパ選手権などで世界記録を出したほとんどの選手がLZR RACEを着用していたため、もの凄く注目されました。
■なぜこんなに話題になっているのか
レーザー・レーサーを着用した選手が世界記録を連発しているから。というのが、一番の理由です。当初は、水着が速いのではなくて、速い選手に水着を提供しているからだという見方もあったのですが、これだけ記録が出続けると、さすがに水着の効果もかなり影響していると考えても問題ないでしょう。
世界的に注目を集め始めたLZR RACERが更に日本で話題になった理由は、日本水泳連盟が当初オリンピックで日本選手はSPEEDO社の水着を着てはいけないと決めていたから、です。結局、6月10日に日本選手は北京オリンピックでどのメーカーの水着も着用できるように方針(契約)を変更しました。
2大会連続で金メダルを期待されている平泳ぎの北島康介選手は、自信のブログで、北京オリンピックでレーザー・レーサーを着用すると表明しました。
■なぜ速いのか
いろいろな技術を結集しているので、それらの総合的な作用ではあるのですが、主な理由は以下の通りです。
- 体を締め付けて細くして抵抗を減らしている
- 体を締め付けて筋肉の揺れを減らしている
- 水着の表面の抵抗が少ない
- 水着が軽い(水を吸わないので特に水中では軽い)
これらのことは、別にSPEEDO社だけが、やっていることではなく、ほとんどのメーカーが知っていて、目指していることです。最近の水着は、すべて、これらを踏まえて開発・製造されていますが、LZR RACERが特に性能がよいということです。
一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、泳いでいるときは想像以上に体の表面が波打っています。それが速く泳ぐ妨げに(抵抗)になっています。それを押さえ込むために、最近の水着は締め付けています。しかし、あまり締め付けすぎて自由に体が動かないのでは、速く泳げません。そこで、素材や縫製を工夫して、締め付けているのだけど、(比較的)関節の可動域には影響が少ないのがLZR RACERです。
■レーザー・レーサーの問題点は?
1.着るのに時間がかかる
2.値段が高い
上記の「速い理由」を実現するためにLZR RACERはもの凄く体を締め付けます。締め付ければ締め付けるほど、上記の1,2の効果は高まるのですが、当然、着るときには大変です。男子用の水着でも胸から足首まで覆うタイプがありますが、LZR RACERの前のモデルでも、膝まで上げて、休憩、太ももまで上げて休憩、腰まで上げて休憩、腕を通して休憩、背中の辺りの肉を調整して、ファスナーを上げて着用完了。という感じで、ちゃんと着るには、10分以上かかります。LZR RACERは、更に強く締め付けるそうで30分以上かかるそうです。
値段は、
メンズロングジョン | ¥69,300 | ウィメンズロングジョン(ファスナー付) | ¥69,300 | |
メンズフルレングス | ¥48,300 | ウィメンズロングジョン | ¥58,800 | |
メンズスパッツ | ¥29,400 | ウィメンズショートジョン | ¥48,300 |
となっており、かなり高額です。
アメリカの通販サイトだともう少し安い(メンズロングジョンで$550)ですが、それでも、かなり高額です。
■入手方法
2008年6月12日現在の状況ですが、入手は相当困難なようです。Google等で検索すると、アメリカやイギリスの通販サイトで、LZR RACERはたくさん見つかるのですが、私が見た限り全て「入荷待ち」となっていました。
日本でも先行予約が始まりましたが、発売されるのは11月以降のようです。生地を作るのも、水着を作るのも特殊な製法なので、1日70着程度しか作れず、オリンピック選手への供給を優先させているのだそうです。
■一般スイマーには
オリンピックに出場するほどの選手ではないけど、それなりに頑張っているくらいの選手(私ぐらい?)には、やはりレーザー・レーサーはあまりオススメではないと思います。注目を浴びる、という意味では当面は絶大な効果があると思いますが、実際のレースのことを考えると、着用にアシスタントつきで30分もかかるというのは、一般スイマーにとっては、問題になる可能性が高いです。
また、かなり高価ですし、何かにちょっとこすって破れたりしたらショックです。
レーザー・レーサーの生地と、もう少し伸縮性の高い生地を合わせたハイブリッドという商品もあります。それくらいのものの方が、現実的(着やすさや、値段)だと思います。