【本の感想】90億の神の御名(アーサー・C・クラーク)

アーサー・C・クラークの短編集です。

本のタイトルは、その中の一つで、世界創世の秘密がわかると言われる90億の神の名前を記する作業をチベットの僧が挑戦している話です。本来何百年かかかって行う作業を最新のコンピュータを使って、数ヶ月で終わらせようとする話です。

 

他の作品も40年以上前に書かれたもので、中には今読むと、おかしな部分もあるのですが、それでも、当時にそこまで想像して書かれたのかと思うと感心します。

例えば、静止軌道にテレビ放送の中継基地の職員の話などは、その位置に衛星を置くことで、世界中を同時中継できるという理論は正しく、現在、静止軌道上にすでに人工衛星がたくさん回っています。でも、有人基地である必要はありません。無人で自動的に稼働させられる技術が確立しています。しかし、有人の基地を静止軌道上に置くことは今の人類には無理です。

1957年に人類が初めて人工衛星を打ち上げ、その12年後には人類が月の上を歩いていた事実から考えれば、その40年後には、月面に基地があったり、他の惑星を人類が探検していたりしているだろうと想像するのは当然かもしれません。

アーサー・C・クラークは、私の宇宙観、世界観、人生観を確立する上で多大なる影響を受けた作家です。

アーサー・C・クラークのもっとも有名な作品は、2001年宇宙の旅ですが、私はそれで、心をグッと引きつけられ、2010年、2061年を読み、モノリス、スターチャイルド、物質と意識などについてのアーサー・C・クラークの考えに共感し、人生観すら変わったと言っても過言ではありません。

そのあとで、過去の作品を読みました。過去の作品には、後に書く2001年シリーズ(?)につながるヒントが多く書かれていることを知りました。

 

この短編集にも多くの要素が含まれています。

また、考えれば考えるほど(想像すれば想像するほど)恐ろしく、怖くなる話もあります。恒星間移動ができるようになった人類が、ある白色矮星の惑星に行き、地下深くに埋められた遺跡を発掘する話などは、本当に怖かったです。

何十億年か後には、我が太陽も寿命が来ます。末期には巨大にふくらみ、地球は蒸発して無くなってしまいます。そのときもし、人類が恒星間を移動できるような技術を持っていなければ、人類も同じような運命をたどるしかありません。

仮に恒星間移動ができるような技術を人類が得たとしても、120兆年後には、陽子破壊によって物質がなくなるわけですから、スターチャイルドに変身(?)し、意識のみの存在にならなければ、やはり、何もかも無くなってしまいます。

 

マニアックな話になってしまいましたが、私は私なりのアーサー・C・クラーク作品の解釈によって、(大げさに言えば)とても人生が豊かになりました。本書もとてもおもしろく読めました。

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