【本の感想】石の花(坂口尚)

私は普段マンガは全く読まないのですが、久しぶりにマンガを読みました。

石の花は、第二次世界大戦中にナチスがユーゴスラビアに侵攻した頃から話が始まります。

戦争、平和、民族、生きると言うこと、などなどとても重くて深いテーマについてどっぷりと考えさせられる話です。

 

日本人として日本に住んでいると、なかなか民族の問題というのは理解が難しいです。イスラエルとパレスチナの問題もそうですが、ある程度は知識として頭に入れることはできても、本当の意味で理解することは難しいです。

1990年代にひどい内戦の末分裂した旧ユーゴスラビアも5つの民族、4つの言語、3つの宗教が共存するとても複雑な国で、どうすべきかという答えが見つからない難しい国だったのだと思います。

言い換えると、地球全体の縮図だったのかもしれません。現在でも地球上では争いは絶えないし、平和になったとは言えません。

 

なぜ、イスラエルとパレスチナは争い続けているのか?

なぜ、アフガニスタンでテロリストが減らないのか?

なぜ、世界中が平和にならないのか?

 

石の花を読むと、そう言うことを少しは理解が深まり、もっともっと考えたくなります。

 

ナチスのやったことについては、絶対に許されないことで、賛同できることはないのですが、何度も石の花に出てくるナチスの将校の台詞

 

「人間は、公平に客観的に判断することはとうていできない」

「人間は、自由を与えられてももてあそぶだけだ」

「自由とは、絶え間なく突きつけられる問いに答え続けなければいけないということで、そんな自由は誰かに預けてしまいたい。国家か、宗教か、慣習か」

 

なんて言うのは、賛同できる部分もあります。私自身、常に自分で考え、常に自分で判断し、常に自分で責任を取ることが、重荷だと考えることもあります。絶対逆らえない上司の言うとおりに仕事をするのはラクだろうななんて考えてしまうことがあります。

 

「だから、優越人種のナチスは、強い力で下等人種を支配して民衆の悩みから解放してやるんだ・・・」という思考展開は間違っていますが、

「誰もが自由を求めているわけではない」とか

「幸福を望むから戦争が起きる」とか

納得できることも少なくありません。

 

「人はパンのみでも生きられてしまうものなのだ」

 

そんなナチス将校に、今生きている私達は迷わず

「そんなことはない」

と言い切れるだろうか?今の日本は、一応自由のある国と言うことになっています。だとすれば、そこに生きる者の責任として、ちゃんと自由に対する義務や責任を負わなければいけません。

 

自ら考え、判断し、責任をとる。その煩わしい行為を、常に行わなければいけません。一人一人がそう考えることによって、もしかすると、いつか世界平和が実現できるのかも知れません。

 

ちなみに、石の花は月刊誌の連載をまとめた本ですが、なんとなく最後の方は話の進みが早いというか、省略されてる感を感じました。連載終了が決まって、強引に話をまとめたように思えます(そんなにひどくはないですが)。あと2冊分くらい増やして全体の話が終わったら、ちょうどよいかなと思いました。最終刊の最後の方で、突然、(ナチスからの解放後に)話が飛んでしまっているので、どのようにそれぞれの人たちがそこに行き着いたか、それ以外の人たちがどうなったのかなど、気になります。

 

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