NBOnlineのこの記事(ITの常識は世間の非常識)などに書かれていることは、システム開発会社の最大の悩みです。
この問題を起こさせないために、常に新しい手法を考え、最も神経を使う部分です。
システム開発会社の本音を言えば、
- システム会社は顧客の業界のことをよく知っているわけではない
- 顧客の言うとおりのシステムを作った
ということになるのです。極論を言えば
「システムがうまく動かないのは、発注者の発注方法が良くないから」
ということになります。それは事実です。
でも、記事にも書かれているとおりプロとしては、それは言えない。寅さん風に言えば「それを言っちゃぁおしまいよぉ」ってことなのです。
顧客にしてみれば、自分たちはITのことは素人なのだから、その点を踏まえてシステム会社が作ってくれ、ということになるのですが、実際に無理なことが多いのです。
例えば
「電子商品カタログを作って、インターネットで公開したい」
という、要望が顧客から出て、システム会社としては一般的なカテゴリ分けや、商品名や属性欄にあるキーワードでの検索機能があればよいと考えて、そのようなシステムの見積もりを出して、実際に開発したとします。
ところが、実はその業界では、商品を探すときには、商品の体積の±10%の数値と、最も長い辺の長さ、を指定して探すのが常識なのだ、ということが、ほとんどシステムができあがった頃に知らされます。
顧客から渡された最初の商品データ一覧(エクセル)には、体積欄には「100m3(2×5×10)」 という内容を入れる、と書かれていて、それを開発者が、データベース上に通常のテキストデータとして登録するように作ってあれば、「体積の±10%の数値と、最も長い辺の長さ」で検索することはできません。
そこで、データベースの設計からやり直すことになり、顧客に「追加費用は○○万円です」と言って、大反発を受けることになるのです。
この例は、非常に単純な例で、普通のシステム開発会社であれば、商品のサイズの指定については、あらかじめ確認しておくでしょうが、これがもっと、システム開発会社が想像できないような常識がその業界にあったり、
「商品サイズをテキストで持っていると、検索などができませんよ」
という、確認を顧客が深く考えずに「OKです」と返事をして、しまったりすると、後で大変なことになることがあります。
最初にチェックリストを作って、顧客の担当者に確認印まで押してもらっていたとしても
「確かに見たけど、検索できないという意味がわからなかった」
と言い張られることもあり、開発会社としては辛いところです。
結局のところ、完全な方法というものはなく、とにかくたくさん説明と確認をしながら、進め、違うと言われたときには直す、という方法しかありません。
つまり、開発プロジェクトを成功させるためには、信頼関係のある顧客とシステム開発会社が、十分な予算と期間を取って、かつ、顧客と開発会社が十分なコミュニケーションを取って進めなければいけないのです。