オーストラリアで出会った人(3):カリスマ(?)同時通訳者

オーストラリアに行く前、日本では大手コンピュータ会社に勤務していました。会社を辞めることになって、最後に社長と面談をしたとき、社長から

 

「オーストラリアで困ったら、この人を頼ってみなさい」

 

と、社長の友人という人(Aさん)の連絡先が書かれたメモを渡されました。

Aさんは、同じ会社のオーストラリア現地法人の翻訳部門で働いていた人で、社長と同期、そのときは既に退職されて、フリーの翻訳・通訳者として活躍されているとのことでした。

 

オーストラリアに着いて1ヶ月くらいしたとき、別に困ったわけではなかったのですが、一度、Aさんに電話をしてみました。すると、ぜひ一度うちに遊びに来なさいと言われ、週末に遊びに行くことにしました。

 

Aさんの家は、私の住んでいたシドニーから、300kmほど内陸に入った田舎町にありました。ちなみに、オーストラリアで300kmというのはご近所です(笑)。

その夜はちょうど、Aさんの元同僚(つまりは私の元先輩にあたる人たち)が、何人も集まって同窓会的なことをすると言うことで、私も参加させていただきました。

 

 

Aさん以外はみんなオーストラリア人なのですが、皆翻訳者または、通訳なので、日本語はペラペラ、と言うより、学術的な知識で言えば私より遥かに日本語に詳しい人たちばかりでした。

ただ、皆さん(Aさんも含め)英語を母国語としている人たちなので、お酒が回ってくると、会話の中の英語の比率が高くなってきます。

集まった人たちは、Aさんを師と仰ぐ人たちで、今でも仕事の相談などをAさんは受けているようでした。

 

Aさんは、当時シドニーからだいぶ離れたところに住んで、通訳の仕事があるときだけシドニーに行っていました。

 

主には国際会議などの同時通訳をされていました。私はそれまで知らなかったのですが、同時通訳という仕事はものすごい準備と訓練が必要な仕事だそうで、その日も10時過ぎまで楽しくみんなでお酒を飲んでいたのですが、日課となっている訓練をされていました。

夜の12時から3時までは、必ず訓練をするのだそうです。ラジオなどを聞きながら、最初は、ラジオの言語のまま同じことを同時にしゃべり、次に、日英同時通訳をしながらしゃべり、英日同時通訳をしながらしゃべるという、訓練です。

 

実際の学会は、1週間もなく、それも2ヶ月に1回程度しか仕事をしていないそうですが、毎日基礎訓練をし、仕事の数週間前からは、専門用語やその他関連知識の勉強や訓練をして、仕事に臨むそうです。

 

Aさん曰く、翻訳や通訳は勉強してある程度知識やテクニックを身につければできるが、同時通訳はスポーツと同じで、訓練をやめたらできなくなる、のだそうです。

 

端から見ると、郊外の大きな家に住み、2ヶ月で1週間しか働かなくて、悠々自適な生活に見えるかもしれないのですが、実は365日ほぼ休みなく働いているのでした。

また、1週間シドニーで仕事をすると、5kg位痩せるそうです。

 

それだけの努力をしているから、最高クラスの仕事ができて、後輩たちからの信頼も厚いのだと思います。

 

Aさんとの出会いが、翻訳や通訳という仕事に興味を持つきっかけとなり、その後(数年後ですが)、翻訳会社に勤めることにつながりました。

 

ちなみに、私は翻訳者でも通訳でもありません。TOEIC630点です(笑)。

 

 

 

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