小中学校に、薪を背負って本を読んでいる銅像や石像がたくさんある二宮金次郎は、勤勉で親孝行の象徴のように扱われています。
子供向けの本にも、子供の頃から幼い弟の面倒を見ながら、家計を支え、勉強もした二宮金次郎の物語が多くあり、私も読んだ記憶があります。そのほとんどは、「のちに立派な人になりました。」で終わっています。
実際、二宮金次郎は立派な人になったのですが、それがただの素朴で真面目な人ではなく、もの凄く先進的な金融システムを開発した人でもあるのだとこの本で始めて知りました。
二宮金次郎が活躍した江戸時代後期は、現代の日本と同じ低成長時代でした。しかも、地方も国も莫大な借金を抱えていました。そんな時代に財政再建を成し遂げた(地方では成功、中央では抵抗勢力などの反対で成功はしなかった)二宮金次郎については、是非とも現代の政治家の方々にも勉強して欲しいです。
もちろん、会社経営者にも当時の「家」を立て直した方法は勉強になりますし、蓄財する方法については、経営者でなくても非常に参考になります。
この本は、伝記というよりは、金融や財政についてを二宮金次郎の生涯と照らし合わせながら解説している本です。ただ、難しい理論で固められているのではなく、二宮金次郎が当時、仲間の奉公人に説明して理解させたりするほど、わかりやすいたとえと共に書かれています。
二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?―人口減少社会の成長戦略 (文春文庫 い 17-14) 猪瀬 直樹 文藝春秋 2007-08 |