人との関わり、愛情、精神、人間の根幹についてなど、いろいろ考えさせられた本でした。かなりの勢いで泣きながら読みました。
自分がガンとわかると同時に、妻がアルツハイマー病を発病し、闘病および介護の日々を綴った本です。途中に詠まれている短歌もたまらなく悲しいです。
「小尿を 流しし床を 拭くわれの 後ろで歌う 妻に涙す」
自分が誰かをわかってもらえず、ついさっきのことも覚えていられない妻に、たたかれ、髪を引っ張られ、叫ばれながら、「ごめん、ごめん」とあやまりながら、下の世話をする・・・。
人間はどこまで人を愛せるのかという問いに、作者は、「怒りには限りがあるが、愛は無限にあふれ出すものだ」と言っております。
読んでいる途中で、妻の顔を見たり、思い浮かべながら、自分はどこまで妻を愛せるのか、考えることもしばしば・・・。
アルツハイマー病というのが、人間の精神を奪ってしまう恐ろしい病気であることを、この本で初めて実感できた気がします。
過去の記憶はもちろん、今日、一緒に行った場所についても覚えていないというのは、本当に辛く悲しいことだと思います。私がそれに耐えられるのかわかりません。それまで一緒に歩んだ人生を一緒に振り返ることもできず、一緒に新しい思い出を作ることもできず、瞬間瞬間を少しでも楽しく過ごせるように、謝り、なだめて、笑顔で接することが本当に私にできるだろうか。
もし、妻がアルツハイマー病にかかり、精神寿命がつきる直前まで、最後に認識できる人が私だろうか?最後まで、呼んでくれる名前は私なのだろうか? また、逆に私が病んだとき・・・・恐ろしい。
老後は妻と、古いアルバムを見ながら、昔の思い出を語り合えることが本当に幸せなことなのだと、心から思います。